ポティーロさんと別れて何時間経っただろうか。
ふと気がつけば、もう日は暮れていた。
これから、俺はどうすべきなのだろう?
ハンターを続けていくべきなのか。
それともここで辞めてしまうべきなのか。
霊鳥の卵だって、売ってしまえば俺くらいなら一生遊んで暮らせるだろう。
ポティーロさんがくれたこの宝玉もそうだ。
自分の人生を考え直す、いい機会なのかもしれない。
ハンターになろうと思ったのだって、他人から見れば子供じみた憧れに過ぎないのだから。
「……ん?」
今、何かむこうで光ったか?
何だか青い光が見えたような気がする。
それに、なんだか頭の中で微かに声が聞こえたような。
俺は無意識のうちに足を動かしていた。
数分ほど、林の中を歩いて辿り着いた先には湖が広がっていた。
水面には美しい満月が映っている。
そして。
『頼む! 答えてくれ……!』
頭の中に、直接声が響き渡る。
その声は俺が湖に近づくほど、強くなっていく。
「誰かいるのか?」
『!! ……もしや、御主はハンターか?』
「ああ。……今は、まだ。」
『そうか! それならよかった! 上手くいったようじゃな。』
この声の主は一体誰なんだ?
それに、ドコから話しかけてきているんだ?
まさか本当に湖の底なんて言わないだろうし……。
『儂はここじゃ。よく水面を見てみるがよい。』
「?」
声に従って湖面を見渡してみる。
すると驚くべき事に、さっきまで映っていた満月が一瞬にして鏡のようなものに変わってしまった。
その中には少し、いや、かなり浅黒い肌のりりしい女性が映し出されている。
「うおっ?! 何だ、これ!?」
『クックック……そう慌てるな。』
いや、そう言われても。
『これは儂の契約者、雲外鏡の力によるものじゃ。』
「雲外鏡……もしかして、式神か?」
『左様。御主が契約しようとしておる狗神と同様の式神じゃ。』
「!」
こ、この人……何故それを?
『何故それを? とでも言いたげな顔じゃな。』
「……お見通しか。」
『まあな。当然そうなると思っておったからの。』
あちらさんは、俺の事を知ってるってわけか。
勿論俺の目的も。
「そっちばかりが納得してても始まらないだろ。できれば説明して欲しいんだけど?」
じゃないとわけがわからないから。
状況が読めなさ過ぎて、頭が混乱してきた。
『そうじゃな。まずはどこから話そうか……、ではまず儂のことから話すとしよう。』
「ああ、そうしてくれ。」
湖面に映る、奇妙な鏡の中にいる人物は真剣な眼差しを向けてきた。
『御主の受け持つ依頼の依頼主こそ、この四楓院夜一じゃ。』