第1部 新米ハンターの冒険録

第01話『いらない報酬と、望んでなかった報酬』

フレイム王国 ハンター協会 ────

俺の名はシュウ。新米ハンターだ。
ハンター協会にはさまざまな依頼が舞い込んでくる。

やれペットを探せーだの、食料をもってこいだの、宝の地図を探して来いだの、 とにかく色んな種類の依頼があって、その数も膨大だったりする。

依頼を達成すれば、依頼主からそれに応じた報酬を貰えるし、 報酬内容は事前に確認できるから、じっくり自分で考えて割に合うものだけを受ければいいわけで、 依頼主にとっても、依頼を請け負うハンターにとっても、協会は重宝されている。

昔は冒険者が小遣い稼ぎにやってたってのが多かったんだけど、 今では俺みたいに依頼を受けて食っていく純粋なハンターはそう珍しくないってわけだ。

とは言っても、俺はまだハンターになりたての新米なわけだから、そんなに偉そうには言えないけどね。


「おや、無事に帰ってきましたか。」
「なんとかね。」

俺は依頼されていた職安整理券を受付のお兄さんに渡した。
メガネをきらりと輝かせて頷くと、彼は職安整理券をしまって奥の倉庫へと歩いていった。

「それにしても……妙な形だよな、コレ。」

森の奥で拾ってきた妙な卵。
何が妙って、もう全部が全部妙だから言いようがないのだが。
口で表現できないのが非常に悔しい。

んな事を考えている間に受付の彼は報酬を持ってきてくれたようだ。

「はい、これが今回の報酬ですね。サンタの長靴。」
「ありがとう。おじさん、今度こそ就職できるといいね。」


おじさんとは俺のおじさんではない。
受付のお兄さんのおじさんでもなく、今回の依頼主のことだ。
これは受付の彼から聞いた話なのだが、このおじさんからの依頼は俺のを含めて六回目らしく、 しかもその全てが職安整理券を探して欲しいという内容だったらしい。
毎度のように就職に失敗してはハンターに依頼をだす、ということなのだそうで、 おじさんの依頼は初心者クエストみたいになっているらしい。
だから俺みたいな新米でも安心して受けれるわけだ。
ただ、おじさんとしても何度も同じ依頼を出すのはちょっと恥じらいがあるらしくて、 毎回弟の名前にしている。かわいそうな弟さん。
でも結局は全部筒抜けなので、本当にかわいそうなのは、やはりおじさんかもしれない。

ところで報酬のサンタの長靴だが、何でおじさんがこんなものを……?
そこで俺は依頼状のコメントを思い出した。

お礼は私のコレクションから……。
何、報酬も自慢の一品ですぞ。


深く考えるのはよそう。
売り払えば生活費になるんだし、ありがたく貰っとけばいいよな。

「全くですね。……まあ、協会としては就職に失敗してくれた方がいいんですけどね。」

仲介料とれるからね。
優しそうな顔して何て腹黒いんだ。人間って怖いな。

「ところで……さっきから何を見ているんですか?」
「え? あ、ああ、コレ? 森の奥で見つけたんだ。妙な形だろ?」

「ちょちょちょちょちょ、ちょっと、そそ、それ、よよよよ、よく見せて下さい!」

いきなり受付に卵をひったくられた!
何しやがんだこいつ!

「う、うわ……まさか、本物……ですか!」
「な、何が!」

「これ、コッコちゃん♪の卵でしょう!?」

何それ、食えんの?

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