第1部 新米ハンターの冒険録

「我は、天命によりて永劫の呪縛と引き換えに、終焉を司る門を開く者。」
天より永劫の呪縛を与えられた者。
終焉を司る門を開く者。
果たして奴は……。

第13話『真実を暴く契約者』

「気になりますか? ……この剣が。」
「……う、うむ。まあな。」
「これは特殊な代物でしてね。古代のルーンマスターがエンチャントした中でも、特に強力だったといわれる能力……すなわち『奥義』が付加された剣です。」

奥義。

あれほど強力な能力も凄いとは思うが、それを操るバーグ卿も……。

「ただ、この剣は特に強力な奥義をエンチャントされているので。ちょっとした副作用もあります。」
「副作用?」
「ええ。それは私に刻まれたこの永劫の呪縛です。」

そう言ってバーグ卿は漆黒のマントで隠していた腕を見せてくれた。

……驚いた。
その腕にはバーグ卿が奥義を発動する際の足元に現れていた、あの呪紋が刻まれていた。
恐ろしいことに、それは紅く光っていたのだ。

紅く。

「私は奥義を発動する際に、その代償として呪縛によって大きく体力を削られるのです。」
「そ、そうか……それで!」

あの時……。
そうあの時、何かがおかしいと感じたのじゃ。
バーグ卿が妙に疲弊しておる様に見えるのが、気になっておったのじゃ。

永劫の呪縛。
強力すぎる奥義の代償、か。

「まあ……私のことはいいでしょう。これでしばらくは安全になると思います。」
「あ、ああ。ありがとう。助かった。」
「いえ。依頼の件は私もできる限り御協力させていただきますよ。すぐに、部下に卵の回収に向かわせて新たな依頼を出しましょう。」
「その事なのじゃが、少しお待ちいただけないじゃろうか?」
「……? 構いませんが。」

確かに卵を届けてもらうには、新たな実力あるハンターを待つのが、時間はかかれど最善だろう。
卵無くして砂漠の平穏は戻らないのだから。
しかし……既に民衆の疲れはピークに近い。
たとえ聖水が戻っても、民衆が死に絶えてしまっては、無意味ではないか?
そうじゃ。
ならば、その新米ハンターに賭けてみるのがいい。
勇気があって、熱意があるのなら。
きっとこの砂漠へたどり着いてくれるのではないか?

「直接、その新米ハンターとやらと話がしてみたい。」
「……本気ですか? お国の一大事ですよ……?」
「無論、じゃ。じゃが、相手の様子しだいではバーグ殿には回収に動いていただきたい。」

この賭けが失敗した時は、
命が絶えるまで、魔物たちから砂漠の民を守り抜いてみせる。

「それは、もちろん構いませんが……。しかし、どうやって接触を?」
「我が相棒の力を借りるのじゃ。」

そう、儂には遠くにいるその者に呼びかけることができるはず。
話によればそのハンターはフレイムからアクアスに向けて旅しているという。
ならば、必ず道中あの湖に差し掛かるはず。
それならば彼女の力を借りて、話しかける事ができる。

「あぁ……そうでしたね。貴方は“験”の式神と契約を。」

「よし、そうとなればすぐにやろう! 上手くあの湖の近くにいてくれればいいのじゃが……!」


かつてこの国の裏の仕事を任されていた儂は、とある式神と契約している。
儂は久方振りに、かの者の名に意識を集中させた。

……あらゆる真実を暴き出し、
「式神降臨!」
秘宝の在り処をも映し出すという伝説の魔鏡。

「雲外鏡!」

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