「残念ながら、我々協会のギルドが正式に依頼を受ける事はできません。
ですが、ハンター達に依頼を仲介することならできます。」
それでも構わん。頼むぞ……、御主ら以外にもう頼れる所がないのじゃ……。」
「……はい。我々も出来うる限りの協力はさせて頂きます。中将殿。」
あれは半月ほど前のことだっただろうか。
まさかこんなにも早く“卵”が発見されるとは、奇跡以外の何でもない。
だがしかし、見つけたのはまだ若い新米ハンターとは……。
しばらく呆然としていたが、私はすぐに冷静に対応を始めた。
「あ、ああ、これはね。その、大した事じゃなくて……これを募集してる依頼主がいてね。」
「え、まじで? ラッキーだったなあ。で、報酬は?」
「あ、えーとですね、ちょっと待ってくださいね。書類で確認してきますので。」
どうする?
あの方に確認できる時間もない。
このまま、彼に依頼を任せるべきだろうか?
……いや、事は重大。
上手く言いくるめて、卵を回収するのが得策だろう。
何か、私の私物で彼のくいつきそうなものは……。
……これだ!
これなら彼も飛びつくはずですっ!
「この依頼の報酬はですね……、職安整理券です!」
「えー、それいらないよ。さっきの依頼の時、二枚もらったから。」
しまった!
わ、私としたことが、こんな少年相手に交渉に失敗するとは……。
落ち着きなさい、私! まだ、まだチャンスはあります!
「だけでは……なくてですね。」
「まだあるんだ?」
「ええ、も、もちろん。えーと、もう1つは……ちょっと待っててくださいね。書類で確認してきます。」
アポロン! 落ち着きなさい!
ここが正念場です! 踏ん張らねば!
何がある!?
……これだ!
「私のかけているGの眼鏡がついてきます!」
「何だよその眼鏡! 何であんたの眼鏡が報酬につくんだよ! いらないよ!」
しまった!
これは最近協会で開発されたばかりの魔器……。
一般にはまだ知られていないんでしたね。
「依頼のほうはいいよ。また良いのがあったら教えてくれたら。」
「そ……そうですか。」
わ、私としたことが……。
この程度の新米ハンター相手に交渉を失敗するとは……!
しかし、ここまできては隠し通す事はできませんね。
……話さなければ、ならないか。
この卵が、何であるかを。