……そんな、馬鹿な。
今まで……今の今まで貴方を殺そうとしていたのに?
こうも簡単に死んでしまうのか?
いや、こうも簡単に殺せてしまうのだろうか?
「この笛には【即死】という力のエンチャントが施されています。その強大な力故に、発動をコントロールするのが難しく、僕もあまり使わないのですが……。」
「貴方も……ハンターなんですか?」
「まあ似たようなもんですかねー。」
ハンターって。
こうやって何のためらいもなく生き物を殺すのか?
これがハンターなのか?
「『貴方も』ってことは、君はハンターなんですね。申し遅れましたが僕の名はポティーロと言います。」
「あ……俺は、シュウ……です。」
「シュウさんですね。どうやら貴方は新米のハンターさんらしいですね?」
「な、何故それが?」
「モンスターの死に動揺するハンターはいません。いるとすれば、それに初めて直面する新米ってことです。」
「……。」
そうだ。
俺はモンスターが死ぬのを初めて見た。
ハンターにとって当たり前の光景を。
初めて。
「ハンターはその職業柄多くのモンスターの命を奪います。ま、今回のは少し事情が違いますが。その覚悟がないのであれば、やめてしまった方がいいでしょう。……命取りになるからね。」
「…………。」
「中途半端な気持ちでハンターを気取るのは、やめて置いたほうがいいですよ?」
その通りかもしれない。
俺は、ハンターには向いていないのかもしれない。
悪戯に危険な目にあうだけなのかもしれない。
何も得るものもないのかもしれない。
「……どうやら、もう一度考え直したほうがいいのかもしれません。」
「そうしたほうがいいでしょう。できるだけ時間をとって、じっくり考えたほうがいい。焦って出した答えの中に、正解なんてありませんからね。」
ポティーロさんが荷物をまとめだした。
そうか。
早く逃げないとまた追手に捕まるから……。
「とりあえず特別サービスでこの宝玉をお譲りします。」
神秘的な緑色に輝く宝玉。
さっき彼が売ろうとしていたモノだ。
「え……でも。」
「いいから。……もし、ハンターを続ける覚悟があるならきっと役に立ちます。辞めるのであればリサイクルショップに売ればきっと高く売れるはずです。」
「……ありがとう。」
「では、僕は主から追われているのでこれで。……またいつか、会えるといいですね。」
「ええ。それでは……。」
そんな言葉しか返せず。
ただ彼が去っていくのを見送る事しかできなかった。
俺はこれからどうすればいいのだろう?
卵を……どうすればいいのだろう。
本当にハンターを続けていくのが正解なのか?
それとも。